生成AIの普及でデータセンター(DC)の消費電力と発熱量が爆発的に増え、投資の主戦場は「サーバーを置く箱」から「熱と電力を効率的に制御する省エネ=グリーンインフラ」へと移っています。
本記事では、次世代グリーンデータセンター事業に取り組む日本株10銘柄を、冷却・電源・運営の3つの切り口から厳選し、最新の業績と注目材料とともに解説します。
この記事の結論
① グリーンDC関連株は「液冷・空調」「電源・受変電」「DC運営」の3領域に大別できる。
② 注目10銘柄は、高砂熱学工業・山洋電気・ダイキン工業・富士電機・三菱重工業・三機工業・新日本空調・三桜工業・さくらインターネット・明電舎。
③ AIサーバーの高発熱化で液冷・省エネ空調・高効率電源の需要が拡大し、各社の業績を押し上げている。
なぜ今「グリーンデータセンター」関連株が注目されるのか
AIサーバーは従来型サーバーに比べて消費電力と発熱量が桁違いに大きく、従来の空冷方式では冷却が追いつかなくなっています。そこで普及が進むのが、水や冷媒など液体でサーバーを冷やす「液冷(液体冷却)」です。液冷は空冷に比べて電力消費を大幅に削減でき、データセンターの省エネ=脱炭素に直結します。
「グリーンデータセンター」とは、こうした高効率な冷却技術や再生可能エネルギー、高効率な受変電・電源設備を組み合わせ、電力効率の指標であるPUE(Power Usage Effectiveness、1.0に近いほど高効率)を改善した次世代型のデータセンターを指します。生成AI需要でDCの建設ラッシュが続くなか、その省エネ化を支える日本企業に物色の矛先が向かっています。
覚えておきたい数字
・液冷方式は空冷比でサーバー冷却の電力を20〜40%、構成によっては90%超削減できるとされる。
・冷却システムはデータセンターの消費電力の30〜40%を占めるといわれ、省エネ余地が大きい。
・NVIDIAの最新世代GPUは消費電力が従来比3〜4倍に達し、液冷化を後押ししている。
次世代グリーンデータセンター関連の日本株10選【比較一覧】
まずは10銘柄の全体像を一覧で整理します。証券コード・分類・事業の柱・直近の注目材料をまとめました(株価・業績は本記事執筆時点の公開情報に基づくもので、最新の数値は各社IRをご確認ください)。
| 銘柄(コード) | 分類 | グリーンDC関連の事業の柱 | 直近の注目材料 |
| 高砂熱学工業 (1969) | 空調工事 | DC向け省エネ空調の設計・施工。空調工事の最大手 | FY2026/3は売上・利益とも過去最高を更新 |
| 山洋電気 (6516) | 冷却機器 | 冷却ファン「San Ace」・無停電電源(UPS) | AIサーバー・リアドア冷却向けに採用拡大 |
| ダイキン工業 (6367) | 空調・液冷 | 空調世界大手。AIサーバー向け液冷へ進出 | NTTデータとDC冷却最適化AIの共同検証を開始 |
| 富士電機 (6504) | 電源・冷却 | 受変電・パワエレ。水冷式エジェクタ冷却機 | 冷却電力を最大85%削減する機器を投入 |
| 三菱重工業 (7011) | 液冷・冷熱 | ターボ冷凍機・液浸冷却。DC向け電源・冷却を統合提案 | KDDI等との液浸冷却で消費電力94%削減を実証 |
| 三機工業 (1961) | 設備工事 | DCの空調・電気・衛生を一体で手掛ける総合設備 | DC向け設備需要で受注が拡大基調 |
| 新日本空調 (1952) | 空調工事 | 三井系の空調設備工事。デジタル×グリーンを推進 | FY2026/3は過去最高益を達成 |
| 三桜工業 (6584) | 液冷部材 | リアドア式水冷装置・水冷モジュール・配管部材 | コンテナ型DC向け水冷モジュールを受注 |
| さくらインターネット (3778) | DC運営 | 国産DC運営。石狩DCはグリーン電力を活用 | AI向けクラウド・ガバメントクラウド需要が追い風 |
| 明電舎 (6508) | 電力インフラ | 変圧器・受変電など重電。DCの電源側を支える | 電力インフラ事業が牽引しFY2026/3は最高益 |
ここからは各銘柄を個別に解説します。
※株価はYahoo!ファイナンスに遷移します
1. 高砂熱学工業(1969)
東証プライム/建設業(空調工事)
空調設備工事の国内最大手で、「環境クリエイター®」を掲げる省エネ・環境ソリューション企業です。オフィスや工場、研究施設に加え、データセンター向けの空調・温熱環境制御に強みを持ち、年間を通じて省エネで最適な空調環境を提供するDC向けサービスを展開しています。
2026年3月期は売上高4,239億円(前期比+11.1%)、営業利益477億円(同+47.3%)と過去最高を更新。効率的な施工体制と採算改善で利益率が大きく向上し、自己資本比率も55.0%に高まりました。AIデータセンターの建設需要が、空調工事の受注を押し上げる構図です。
業績ハイライト(FY2026/3)
売上高 4,239億円(+11.1%)/営業利益 477億円(+47.3%)/過去最高を更新。
2. 山洋電気(6516)
東証プライム/電気機器(冷却ファン・電源)
NTT向け電源を発祥とし、冷却ファン「San Ace(サンエース)」、無停電電源装置(UPS/SANUPS)、サーボモーターを柱とする企業です。San Aceは高静圧・高風量・低騒音・長寿命で世界的に評価が高く、AIサーバーのGPU冷却やリアドア冷却ラックの背面ファンに採用実績があります。
2026年3月期の連結最終利益は86.6億円(前期比+53.6%)。続く2027年3月期も120億円(同+38.6%)と4期ぶりの過去最高益を見込みます。AIデータセンターの拡大は、冷却ファンとUPSの両面で同社の追い風となっています。
注目ポイント
冷却ファン(熱対策)と無停電電源(電力対策)の両方を持ち、AIサーバー需要を二重に取り込める。
3. ダイキン工業(6367)
東証プライム/機械(空調)
空調機器で世界トップ級のシェアを誇る大手です。従来の大型空調にとどまらず、AIサーバーのラック単位・キャビネット単位の冷却へ踏み込んでおり、米Dynamic Data Centers Solutions社や、負圧式液体冷却に強みを持つ米Chilldyne(チルダイン)社の買収を通じて、データセンター冷却プラットフォーマーへの進化を進めています。
2026年3月期は売上高5兆150億円(前期比+ 5.5%)、営業利益4,149億円(同+ 3.3%)と増収増益。2026年6月にはNTTデータと、AIでサーバー内部の熱状態を予測してDC冷却を最適化する次世代ソリューションの共同検証(2026年7月開始)を発表し、空調・熱源・液体冷却設備の統合制御を目指しています。
ここに注目
空調機器メーカーから「DC冷却の統合プラットフォーマー」へ。液冷・局所冷却への移行が成長の鍵。
4. 富士電機(6504)
東証プライム/電気機器(重電・パワエレ)
変圧器・受変電設備やパワーエレクトロニクス、パワー半導体に強みを持つ重電大手です。データセンターでは電源・受変電側を支えるだけでなく、冷却分野にも参入。データセンターの冷却電力を最大85%削減する「水冷式エジェクタ冷却機」を開発し、2026年に投入すると発表しました。
国内外で変圧器・開閉装置や電機盤・電源盤の生産能力増強を進めており、AIデータセンターの電力需要増を取り込む体制を整えています。証券会社の一部は目標株価を引き上げるなど、市場の評価も高まっています。
覚えておきたい数字
水冷式エジェクタ冷却機で、データセンターの冷却電力を最大85%削減できると発表。
5. 三菱重工業(7011)
東証プライム/機械(重工業・冷熱)
発電システムから航空・防衛、冷熱製品までを手掛ける総合重機大手です。国内トップシェアのターボ冷凍機をはじめ幅広い冷却装置を持ち、データセンター向けには電源・冷却・制御の製品群とエンジニアリングを統合し、設備をモジュール化して保守・サービスまで一貫提供する事業を育てています。KDDIなどと共同で取り組んだサーバーの液浸冷却では、従来型データセンター比で消費電力を約94%削減し、電力効率の指標であるPUE1.05を実証しました。
2026年3月期は売上収益4兆9,741億円(前期比+ 14.1%)、事業利益4,322億円(同+ 21.8%)と過去最高水準の大幅増収増益を達成。エナジーや航空・防衛・宇宙が業績を牽引し、増配も予定しています。データセンター関連は同社の成長分野の一つに位置づけられています。
覚えておきたい数字
液浸冷却の実証で、従来型データセンター比の消費電力を約94%削減し、PUE1.05を達成。
6. 三機工業(1961)
東証プライム/建設業(総合設備)
三井系の設備工事大手で、空調・電気・衛生設備からプラント、搬送、環境関連までを一体で手掛ける総合エンジニアリング企業です。データセンターの空調・電気設備を含む建築設備分野で実績を積み、DC建設需要の拡大が受注の追い風となっています。
2027年3月期は売上高2,600億円、営業利益295億円を見込み、中期経営計画に沿った利益成長を目指しています。
7. 新日本空調(1952)
東証プライム/建設業(空調工事)
三井系の空調設備工事会社で、原子力空調や微粒子可視化など独自技術に強みを持ちます。「デジタルとグリーンを両輪」に掲げ、省エネ性能の高い空調環境づくりを進めており、データセンターを含む高度な環境制御ニーズを取り込んでいます。
2026年3月期は売上高1,548億円(前期比+12.5%)、営業利益151億円(同+33.3%)と大幅増益で過去最高益を達成。ROEも高水準で、株主還元にも積極的です。
8. 三桜工業(6584)
東証プライム/輸送用機器(自動車部品・液冷部材)
自動車用チューブ・配管で高シェアを持つ部品メーカーで、熱交換技術を応用したデータセンター向け液冷部材を新規事業として育成しています。2024年に「リアドア式水冷装置」を公表して以降、間接水冷・直接水冷・液冷・空冷へと製品ラインアップを拡充。コンテナ型DCを運営するゲットワークス社と共同で、複数メーカーの水冷サーバーに対応する水冷モジュールを開発・受注したほか、軽量な「ボールバルブ継手」も複数社から受注しています。
ここに注目
DC大型受注の利益貢献は本格化までタイムラグがあり、現在は投資・仕込みの段階。中長期目線で見たい銘柄。
9. さくらインターネット(3778)
東証プライム/情報・通信(DC運営)
ホスティング・クラウドサービスを主力とする国産データセンター運営企業です。北海道の石狩データセンターは、冷涼な外気や再生可能エネルギーを活用したグリーンなDCとして知られ、AI向けの計算基盤(クラウドGPUサービス)やガバメントクラウドの需要拡大が成長を牽引しています。
AIデータセンター需要を背景に来期も高い成長が見込まれる一方、設備投資負担や株価のボラティリティ(変動)が大きい点には留意が必要です。
10. 明電舎(6508)
東証プライム/電気機器(重電・電力インフラ)
変圧器や受変電設備、開閉装置などを手掛ける重電メーカーです。データセンターの「電源側」を支える電力インフラ事業が主力で、DCの建設ラッシュに伴う受変電設備の需要拡大が追い風となっています。
2026年3月期は売上高3,261億円(前期比+8.3%)、営業利益271億円(同+26.1%)と過去最高を更新。電力インフラ事業とフィールドエンジニアリング事業が業績を牽引し、自己資本比率も46.8%に改善しました。
グリーンDC関連株を選ぶ際の3つの視点
関連銘柄は幅広く、値動きのきっかけや成長スピードもさまざまです。次の3つの視点で整理すると、自分の投資スタイルに合う銘柄を見つけやすくなります。
選定の3つの視点
① 領域で分ける:「冷却(液冷・空調)」「電源・受変電」「DC運営」のどこに強みがあるか。
② 業績への反映時期:すでに最高益で恩恵が出ている企業か、これから受注が本格化する仕込み段階の企業か。
③ 専業度とリスク:DCが全社業績に占める比率と、財務・ガバナンスの健全性をあわせて確認する。
投資する際の注意点・リスク
グリーンデータセンターは中長期で有望なテーマですが、株式投資には固有のリスクが伴います。テーマ人気で短期的に株価が過熱しやすく、業績の裏付け以上に買われている局面では調整(下落)も大きくなりがちです。
主なリスク要因
・テーマ過熱による株価のオーバーシュートと、その後の急落リスク。
・DC投資はサイクル性があり、GPUの世代交代や設備投資の一服で需要が変動する可能性。
・個別企業の業績下振れ、為替変動、会計・品質などガバナンス面の問題が生じる可能性。
・本記事の業績・株価は執筆時点の公開情報に基づくもので、将来の成果を保証するものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. グリーンデータセンター関連株とは何ですか?
A. 高効率な液冷・省エネ空調、高効率な受変電・電源設備、再生可能エネルギーの活用などを通じて、データセンターの電力効率(PUE)を改善し脱炭素に貢献する企業群の総称です。冷却機器・空調工事・電源・DC運営など幅広い業種が含まれます。
Q. なぜAIの普及でデータセンター関連株が買われているのですか?
A. 生成AIに使うGPUサーバーは消費電力と発熱量が非常に大きく、従来の空冷では冷却が追いつきません。そのため液冷や省エネ空調、高効率電源の需要が急増し、これらを手掛ける企業の業績期待が高まっているためです。
Q. 初心者はどの領域から見ればよいですか?
A. まずは「冷却(液冷・空調)」「電源・受変電」「DC運営」の3領域に分けて理解するのがおすすめです。すでに最高益を更新している企業は業績の裏付けがある一方、株価が割高になりやすい点にも注意しましょう。
Q. 山洋電気と高砂熱学工業はどんな違いがありますか?
A. 山洋電気は冷却ファンやUPSといった「機器」を作るメーカーで、AIサーバーに直接組み込まれる部品が中心です。高砂熱学工業はデータセンターそのものの空調設備を設計・施工する「工事」の最大手で、建物単位で省エネ空調を担う点が異なります。
まとめ
生成AIの普及で、データセンター投資の主戦場は「熱と電力をいかに効率よく制御するか」というグリーンインフラへと移りました。今回紹介した10銘柄は、液冷・省エネ空調、受変電・電源、DC運営という3領域でこの流れを支える日本企業です。
各社は最高益更新や大型受注など個別の材料を持つ一方、テーマ過熱やガバナンスなどのリスクも抱えています。領域・業績反映時期・専業度の3つの視点で整理し、ご自身の投資方針に合わせて、最新のIR情報を確認しながら検討することをおすすめします。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。株式投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断で行ってください。





















