生成AIや半導体の需要拡大、脱炭素、そして東京証券取引所による資本効率改善(PBR是正)の要請を背景に、日本の化学・素材セクターへの注目も高まっています。
本記事では、半導体封止材で世界トップ級の住友ベークライトを含め、総合化学・電子材料・先端素材をバランスよくカバーする10銘柄を厳選し、株価やPER・配当利回りといった指標とあわせて事業内容・投資ポイントを整理します。
化学テーマ株とは?いま注目される3つの理由
「化学テーマ株」とは、化学品・素材を製造販売する企業群の株式を指します。総合化学メーカーから、半導体・電子材料、炭素繊維などの先端素材まで裾野が広く、景気敏感(シクリカル)でありながら成長テーマも併せ持つのが特徴です。注目される主な理由は次の3点です。
① AI・半導体材料の需要拡大
生成AIの普及で半導体の生産・高性能化が進み、シリコンウェハ、封止材、後工程(パッケージング)材料などの需要が拡大。住友ベークライトやレゾナック、大阪有機化学などが直接の恩恵を受けています。
② 構造改革とPBR是正の動き
総合化学大手の多くはPBR1倍前後の割安圏にあり、東証の資本効率改善要請を受けて事業ポートフォリオの見直しや株主還元の強化が進んでいます。割安の是正期待が株価を後押しする構図です。
③ 脱炭素・次世代素材の長期テーマ
ペロブスカイト太陽電池(積水化学)や、半導体・電子部品を支える機能性化学品など、脱炭素・エネルギー分野の先端素材は中長期の成長ドライバーとして期待されています。
化学テーマ株10銘柄 一覧比較表
まずは10銘柄の主要指標を一覧で比較します。株価・時価総額・PER(会社予想ベース)・PBR・配当利回りはいずれも2026年6月時点の概算値です。
| # | 銘柄名 | コード | 株価目安 | 時価総額 | PER(予) | PBR | 配当利回り |
| 1 | 多木化学 | 4025 | 約5,400円 | 約510億円 | 約17倍 | 約1.0倍 | 約1.5% |
| 2 | 住友ベークライト | 4203 | 約7,360円 | 約6,500億円 | 約23倍 | 約1.9倍 | 約1.6% |
| 3 | レゾナック・ホールディングス | 4004 | 約17,340円 | 約3.2兆円 | 約42倍 | 約4.5倍 | 約0.4% |
| 4 | 大阪有機化学工業 | 4187 | 約5,740円 | 約1,290億円 | 約33倍 | 約2.6倍 | 約1.2% |
| 5 | トクヤマ | 4043 | 約5,150円 | 約3,700億円 | 約16倍 | 約1.3倍 | 約2.3% |
| 6 | 日本酸素ホールディングス | 4091 | 約6,180円 | 約2.68兆円 | 約20倍 | 約2.1倍 | 約1.1% |
| 7 | 四国化成ホールディングス | 4099 | 約7,250円 | 約3,250億円 | 約30倍 | 約3.3倍 | 約0.8% |
| 8 | 松本油脂製薬 | 4365 | 約21,500円 | 約970億円 | 約12倍 | 約0.7倍 | 約1.9% |
| 9 | 積水化学工業 | 4204 | 約2,460円 | 約9,950億円 | 約13.5倍 | 約1.1倍 | 約3.2% |
| 10 | 旭有機材 | 4216 | 約6,690円 | 約1,320億円 | 約21倍 | 約1.5倍 | 約1.8% |
※数値は各種マーケット情報をもとにした概算で、市場の変動により変化します。投資判断の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。
注目10銘柄を個別に解説
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1. 多木化学(4025)|肥料×機能性ナノ材料・バイオ
市場・業種:東証プライム/化学(12月決算) / 株価目安:約5,400円 / 配当利回り:約1.5%
多木化学は、兵庫県加古川市に本社を置く「人造肥料のパイオニア」として知られる中堅化学メーカーです。肥料・土壌改良材などのアグリ事業を祖業に、水処理薬剤や機能性ナノ材料(酸化チタンゾルなど)、組換えタンパク質・ペプチドといったバイオ関連まで幅広く展開しています。
水処理薬剤は社会インフラを支える安定収益源で、機能性ナノ材料は半導体・電子材料向けに需要があります。2026年12月期第1四半期はアグリ・化学品がともに好調で大幅な増収増益となりました。PBRは約1.0倍、自己資本比率65%超と財務は健全です。
POINT|多角的なテーマ性を持つ中小型株
肥料の安定収益に加え、機能性ナノ材料(電子材料)やバイオ・ペプチドなど複数のテーマ性を併せ持つ。時価総額は本リストで最小で値動きは大きめ。株価は1年で大きく上昇しており、過熱感には留意したい。
2. 住友ベークライト(4203)|半導体封止材で世界トップ級
市場・業種:東証プライム/化学 / 株価目安:約7,360円 / 配当利回り:約1.6%
住友ベークライトは、半導体を保護する封止材(エポキシ樹脂成形材料)で世界トップ級のシェアを持つプラスチック素材メーカーです。フェノール樹脂や医療機器(クオリティオブライフ製品)も手がけています。
AI向け半導体パッケージの高度化に伴い封止材需要が拡大し、2026年3月期は売上収益3,198億円(前期比5.0%増)、営業利益354億円(同43.1%増)と大幅な増益を達成しました。
POINT|業績ハイライト
2026年3月期 営業利益 約355億円(前期比 +43.1%)。AI半導体の旺盛な需要が追い風。株価は1年で大きく上昇しており、相応にバリュエーション(PER・PBR)も切り上がっている点は要確認。
3. レゾナック・ホールディングス(4004)|半導体後工程材料の主役
市場・業種:東証プライム/化学(12月決算) / 株価目安:約17,340円 / 配当利回り:約0.4%
レゾナック・ホールディングスは旧・昭和電工を母体とする機能性化学メーカーで、半導体の「後工程」(パッケージング)材料で世界的に高い競争力を持ちます。黒鉛電極やリチウムイオン電池材料なども展開しています。
生成AIブームを背景に半導体・電子材料セグメントが業績を牽引し、市場の期待を集めています。証券会社が目標株価を大きく引き上げる動きもみられ、株価は急騰しました。
POINT|AI半導体の本命格
AI半導体の高性能化で重要性が増す「後工程材料」の代表銘柄。成長テーマ性は随一。ただしPERは40倍超と高い期待を織り込む水準で、配当利回りは低め。値動きの大きさにも注意。
4. 大阪有機化学工業(4187)|半導体フォトレジスト材料
市場・業種:東証プライム/化学(11月決算) / 株価目安:約5,740円 / 配当利回り:約1.2%
大阪有機化学工業は、特殊アクリル酸エステル・モノマー(塗料・インキ・粘接着剤の原料)を祖業とする独立系の化学メーカーです。近年は電子材料事業を強化し、半導体用フォトレジスト原料や液晶パネル加工用のフォトレジスト材料を手がけています。
AI向けを中心とした最先端半導体材料の販売が伸び、2026年11月期第1四半期は営業利益が前年同期比34.2%増と好調。自己資本比率75%超と財務も健全です。半導体材料への期待から株価は過去最高値圏まで上昇しました。
POINT|成長期待と高バリュエーション
半導体フォトレジスト材料の成長期待は大きいが、株価上昇でPER・PBRは高めの水準にある。中小型の電子材料株は値動きが大きい。半導体市況の調整局面では株価の振れ幅にも注意したい。
5. トクヤマ(4043)|半導体用多結晶シリコンに強み
市場・業種:東証プライム/化学 / 株価目安:約5,150円 / 配当利回り:約2.3%
トクヤマは、化成品(苛性ソーダ・塩化ビニル)、セメント、電子材料、ライフサイエンスを手がける化学メーカーです。なかでも半導体用の多結晶シリコンで世界的なサプライヤーとして知られています。
AI・半導体需要を背景に電子材料が好調で、2026年3月期は営業利益370億円(前期比23.5%増)と増益を達成。PERは10倍台と相対的に割安で、配当利回りも2%台と中程度の水準です。
POINT|半導体材料×割安バリュー
半導体用多結晶シリコンという成長分野を持ちながら、PER10倍台・配当2%台と割安感がある。化成品・セメントなど市況性の高い事業も併せ持つため、景気・市況の変動は業績の振れ要因。
6. 日本酸素ホールディングス(4091)|産業ガス 国内最大手・世界4位
市場・業種:東証プライム/化学 / 株価目安:約6,180円 / 配当利回り:約1.1%
日本酸素ホールディングスは、大陽日酸を中核とする国内最大手の産業ガスメーカーで、世界では第4位の規模を誇ります。酸素・窒素・アルゴンなどの工業ガスに加え、半導体製造に不可欠な電子材料ガス(特殊ガス)を供給しています。
ガス事業は長期契約に基づく安定収益(ストック型)が特徴で、ディフェンシブ性とAI・半導体の成長性を併せ持ちます。2026年3月期は売上高1兆3,080億円と堅調に推移しました。
POINT|安定収益×半導体ガス
産業ガスは景気変動に強いストック型ビジネス。半導体向け電子材料ガスで成長性も取り込む。配当利回りは1%台と低め。海外比率が高く、為替や海外景気の影響を受ける点には留意したい。
7. 四国化成ホールディングス(4099)|プリント配線板・半導体向け薬剤
市場・業種:東証プライム/化学(12月決算) / 株価目安:約7,250円 / 配当利回り:約0.8%
四国化成ホールディングスは、香川県丸亀市に本社を置く化学メーカーで、化学品事業(プリント配線板の表面処理薬剤、半導体材料、樹脂改質剤、ゴム・タイヤ薬品など)と建材事業(壁材・舗装材・エクステリア)を展開しています。
イミダゾール系化合物などのファインケミカルに強みを持ち、2025年12月期は化学品事業の好調で売上高・利益が過去最高を更新。半導体・電子材料テーマとして物色され、株価は大きく上昇しました。
POINT|テーマ性と過熱感
プリント配線板・半導体向け薬剤のニッチ高シェアが強み。化学品事業は過去最高益を更新。株価は1年で大きく上昇し、PER・PBRは高水準。中小型株ゆえの値動きの大きさに注意したい。
8. 松本油脂製薬(4365)|熱膨張性マイクロカプセル 世界トップ級
市場・業種:東証スタンダード/化学 / 株価目安:約21,500円 / 配当利回り:約1.9%
松本油脂製薬は、繊維用薬剤を祖業とする界面活性剤・パフォーマンスケミカルの専業メーカーです。なかでも熱膨張性マイクロカプセル「マツモトマイクロスフェアー」で世界トップ級のシェアを持ち、自動車・住宅の軽量化や発泡、化粧品など幅広い用途に使われています。磁性流体や高分子・無機製品も手がけています。
自己資本比率は83%超と実質無借金に近い鉄壁の財務が特徴で、ROEも安定しています。2026年3月期は減益予想ながら、PBRは0.7倍前後と純資産を下回る割安な水準にあります(東証スタンダード上場の値がさ株)。
POINT|低PBR×好財務のニッチトップ
自己資本比率83%超・PBR約0.7倍。世界シェアの高いマイクロカプセルを持つ隠れた優良中小型株。1株価格が高い値がさ株で、東証スタンダード市場のため流動性はプライム大型株より低い点に留意。
9. 積水化学工業(4204)|高機能プラ×次世代太陽電池
市場・業種:東証プライム/化学 / 株価目安:約2,460円 / 配当利回り:約3.2%
積水化学工業は、高機能プラスチックス(電子・車載・住インフラ材)、住宅(セキスイハイム)、環境・ライフライン(塩ビ管など)を展開する樹脂加工大手です。
2026年3月期は高付加価値品へのシフトにより売上高1兆3,092億円と過去最高を達成。次世代の「ペロブスカイト太陽電池」の事業化を進めており、成長テーマでも注目されています。
POINT| 売上高 過去最高
2026年3月期 売上高 約1兆3,092億円(過去最高)。配当利回りは約3.2%。ペロブスカイト太陽電池は将来の成長ドライバー候補。本格的な収益貢献は今後の課題。
10. 旭有機材(4216)|半導体製造装置向け樹脂バルブ
市場・業種:東証プライム/化学 / 株価目安:約6,690円 / 配当利回り:約1.8%
旭有機材は、旭化成グループの工業用樹脂・プラスチックバルブメーカーです。管材システム事業(樹脂バルブ・継手・パイプ、半導体製造装置向けの高純度バルブや流体制御機器)と、フェノール樹脂などの樹脂事業を展開しています。本社は宮崎県延岡市です。
半導体製造装置向けの高純度フッ素樹脂バルブなどに強みを持ち、半導体の設備投資サイクルに業績が連動します。2026年3月期は設備投資需要の低迷で減収減益となりましたが、2027年3月期は半導体需要の回復を見込み増収増益を予想。自己資本比率74%超と財務は健全です。
POINT|半導体設備投資の回復に期待
半導体製造装置向けの高純度流体システムに強み。設備投資の回復局面では業績の伸びが期待できる。裏を返せば半導体設備投資の調整局面では業績・株価が振れやすい。シクリカル性に留意したい。
化学テーマ株を選ぶ3つのポイント
ポイント1:タイプ別に整理する
化学株は大きく、①基礎・総合化学(トクヤマ・積水化学)、②半導体・電子材料(住友ベークライト・レゾナック・大阪有機化学・四国化成・旭有機材)、③産業ガス・スペシャリティ(日本酸素ホールディングス・多木化学・松本油脂製薬)に分けて考えると、値動きの性質や成長ドライバーを把握しやすくなります。
ポイント2:シクリカル性とバリュエーションを見る
化学株は景気・市況に左右されやすいため、PER・PBRが一時的な業績で大きく振れます。割安に見える局面が業績悪化の織り込みである場合もあるため、過去レンジや業績トレンドとあわせて確認することが重要です。
ポイント3:構造改革・株主還元の進捗を確認する
低PBR銘柄では、事業再編・資産効率改善・増配や自社株買いといった施策の実行が株価見直しのカギになります。中期経営計画や決算説明資料で進捗をチェックしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 化学テーマ株とは何ですか?
A.化学テーマ株とは、化学品や素材を製造・販売する企業群の株式を指します。総合化学メーカーから半導体材料・電子材料、炭素繊維などの先端素材まで幅広く、景気に敏感(シクリカル)な側面と、AI・半導体・脱炭素といった成長テーマの両面を併せ持つのが特徴です。
Q2. 住友ベークライトはどのような会社ですか?
A.住友ベークライト(証券コード4203)は、半導体を保護する封止材(エポキシ樹脂成形材料)で世界トップ級のシェアを持つ化学メーカーです。フェノール樹脂や医療機器も手がけ、AI向け半導体パッケージ材料の需要拡大により、2026年3月期は営業利益が前期比約43%増加しました。
Q3. 化学株はなぜ「割安」と言われるのですか?
A.総合化学大手の多くはPBR(株価純資産倍率)が1倍前後かそれ以下で推移しており、保有資産に比べて株価が低い「割安」とされやすい状況です。背景には石油化学の市況変動や低いROEがあり、東京証券取引所のPBR改善要請を受けた構造改革・株主還元の強化が、株価見直しの材料として注目されています。
Q4. 化学テーマ株のなかで配当利回りが高い銘柄は?
A.本記事の10銘柄では、積水化学工業(約3.2%)、トクヤマ(約2.3%)、松本油脂製薬(約1.9%)などが配当利回り2〜3%前後と高めです。一方、半導体材料の成長期待を集めるレゾナック・ホールディングスや四国化成ホールディングスなどは利回りが低い傾向にあります(数値はいずれも2026年6月時点の目安)。
Q5. 化学テーマ株はNISAで購入できますか?
A.本記事で取り上げた10銘柄はいずれも東京証券取引所プライム市場の上場銘柄で、NISAの成長投資枠の対象です。ただし個別株は値動きが大きいため、分散投資やご自身のリスク許容度に応じた判断が大切です。
まとめ
日本の化学テーマ株は、AI・半導体材料という成長性と、低PBR・高配当というバリューの両面を兼ね備えた魅力的なセクターです。住友ベークライトやレゾナック、大阪有機化学のように半導体需要を直接取り込む銘柄、トクヤマや松本油脂製薬のように割安(低PBR)で配当妙味のある銘柄、日本酸素ホールディングスのように安定収益を持つ銘柄など、性格は多様です。
本記事の比較表とポイントを手がかりに、ご自身の投資方針に合った銘柄を検討してみてください。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。株式投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断で行ってください。






















