日本のファッションメーカー上場企業完全ガイド|投資ポイントと比較分析

日本のファッションメーカー上場企業完全ガイド|投資ポイントと比較分析

日本のファッション・アパレル業界は、長年にわたり安定的な成長を続けてきた魅力的な投資セクターです。2024年度の決算では、多くの企業が増収増益を達成し、コロナ禍からの完全な回復を示しています。

本記事では、東京証券取引所に上場する主要ファッションメーカーの業績、投資ポイント、そして今後の成長性について徹底解説します。

日本の主要ファッションメーカー上場企業一覧

日本には約40社以上のファッション関連企業が上場しており、東証プライム、スタンダード市場で取引されています。業態は大きく分けて、SPAモデル(製造小売)、百貨店系アパレル、カジュアル衣料チェーン、専門店チェーンなどに分類されます。

時価総額トップ5企業の特徴

  1. ファーストリテイリング(9983):時価総額約8兆円規模
  2. アンドエスティHD(2685):時価総額約3,200億円規模
  3. パルグループホールディングス(2726):時価総額約3,200億円規模
  4. しまむら(8227):時価総額約1,000億円規模
  5. オンワードホールディングス(8016):時価総額約800億円規模

※各数字は2025年11月現在の内容です

最新の売上高は各企業の決算・IR情報をご覧ください

主要企業の詳細分析と投資ポイント

1. ファーストリテイリング(9983)|グローバル展開の王者

企業概要

「ユニクロ」「ジーユー」「セオリー」などを展開する世界第3位のアパレル企業。製造小売業(SPA)のビジネスモデルで、企画から製造、販売まで一貫して手がけます。

2025年8期 決算短信

  • 売上収益: 3兆4,005億円(前期比9.6%増)
  • 営業利益: 5,511億円(前期比13.6%増)

2026年度8月期見通し

売上収益3兆7,500億円、営業利益6,100億円を見込んでおり、さらなる成長が期待されています。

投資のポイント

強み

  • グローバル展開の加速:欧米市場での旗艦店が大成功し、ブランド認知度が向上
  • 高い収益性:営業利益率16%超は業界トップクラス
  • デジタル化の推進:経営コックピットによるリアルタイム経営管理
  • 強固なバランスシート:実質無借金経営
  • ESG対応:サステナブル素材の開発と調達体制の構築

懸念点

  • 中国市場の不透明感:景気減速により既存店の回復が遅れ
  • 為替リスク:円安メリットがある一方、円高局面では逆風
  • 米国関税政策:トランプ政権の関税政策が下期のリスク要因
  • 高い株価水準:PER 17倍台と割高感も

投資判断:長期保有向き。グローバル成長ストーリーは健在で、配当も年500円(利回り約1.2%)と安定的。

2. 株式会社アンドエスティHD(2685)|多ブランド戦略の成功例

企業概要

「グローバルワーク」「ローリーズファーム」「ニコアンド」など人気ブランドを多数展開。ファッションビルやショッピングモールを中心に全国展開しています。

2026年2月期 第2期 四半期業績

  • 売上高: 1,493億円(前期比3.6%増)
  • 営業利益: 79億円(前期比19.4%減)

投資のポイント

強み

  • 多様なブランドポートフォリオ:ヤングからミドル層まで幅広くカバー
  • OMO戦略:店舗とECの融合で顧客体験を向上
  • 出店余地:全国にまだ展開できるエリアが残存
  • フリマサービス「.C」:業界初の取り組みで循環型経済に対応

懸念点

  • 利益率の低下:広告宣伝費や設備投資の増加で短期的な減益
  • 気温変動リスク:天候に左右されやすい商品構成
  • EC売上の伸び悩み:オンライン強化が課題

投資判断:中長期での成長投資を評価できる投資家向き。

3. パルグループホールディングス(2726)|高収益の多ブランド展開

企業概要

女性向けアパレルを中心に、婦人服・紳士服・雑貨の企画製造卸・小売を展開。

2026年2月 第2期 四半期業績

  • 売上高: 1,170億円(前期比15.6%増)
  • 営業利益: 140億円(前期比19.4%増)

投資のポイント

強み

  • 高い利益率:営業利益率11.5%は業界でもトップクラス
  • 強力なブランド力:ファン層の厚い複数ブランドを保有
  • デジタルマーケティング:SNSを活用した効率的な顧客獲得
  • 配当利回り:約1.74%と安定配当

懸念点

  • 株価の割高感:PER 17倍、PBR 4倍超と高水準
  • 競争激化:同価格帯での競合増加

投資判断:業績の安定性と成長性を評価する投資家向き。

4. しまむら(8227)|ディスカウント衣料の雄

企業概要

低価格カジュアル衣料チェーン。郊外のロードサイドを中心に全国展開。「しまむら」「アベイル」「バースデイ」などの業態を運営。

2026年2月 第2期 四半期業績

  • 売上高: 3,435億円(前期比3.9%増)
  • 営業利益: 314億円(前期比0.2%増)

主力の「しまむら」既存店売上高は堅調に推移し、インフルエンサーコラボやキャラクター商品が好調でした。

投資のポイント

強み

  • 低価格戦略:インフレ局面でも強い価格競争力
  • 郊外立地:家賃負担が軽く高い収益性を維持
  • 安定配当:長年にわたり安定した配当を継続
  • 気候変動に強い商品構成:実用商品が中心

懸念点

  • 成長性の鈍化:国内市場は飽和状態に近い
  • EC対応の遅れ:オンライン販売への対応が課題

投資判断:ディフェンシブ銘柄として配当狙いの投資家向き。

5. オンワードホールディングス(8016)|百貨店系アパレルの復活

企業概要

「23区」「組曲」「自由区」などのブランドを展開する総合アパレル大手。百貨店を主要販路とする。

2026年2月期 第2期 四半期業績

  • 売上高: 1,126億円(前期比18.4%増)
  • 営業利益: 57億円(前期比9.1%増)

2008年度以降で最高益を達成し、V字回復を果たしました。

投資のポイント

強み

  • 構造改革の成功:不採算店舗の整理と高収益化
  • OMO戦略「クリック&トライ」:店舗とECの融合が奏功
  • ブランド力:「23区」など根強いファン層を持つ
  • 海外展開:アジア市場での成長余地
  • 増配方針:2025年度は年30円配当予定

懸念点

  • 百貨店依存:百貨店市場の縮小リスク
  • ミドル・シニア層中心:若年層へのアプローチが課題
  • 欧州事業:「ジョゼフ」などの海外ブランドは依然として赤字

投資判断:リカバリーストーリーを評価する投資家向き。

上場ファッションメーカー主要5社比較表

項目ファーストリテイリングアンドエスティHDパルグループHDしまむらオンワードHD
証券コード99832685272682278016
市場東証プライム東証プライム東証プライム東証プライム東証プライム
売上高3兆1,038億円2,931億円2,310億円650億円2,300億円
営業利益5,009億円予想159億円予想264億円予想6,926億円予想約800億円予想
時価総額約8兆円約1,430億円約4,033億円約8261億円約800億円
PER17.77倍10.9倍22.45倍19.199.43
配当利回り1.2%3.06%1.38%1.83%4.32%
主力ブランドユニクロ・GUグローバルワーク・ローリーズファーム多数しまむら23区・組曲
ビジネスモデルSPA(製造小売)SPASPA小売専業製造卸・小売
販路直営店・ECSC・ECSC・百貨店・EC郊外店舗百貨店・直営店・EC
海外展開グローバル(65%)限定的限定的なしアジア中心

業態別の投資特性と選び方

SPAモデル企業の特徴

代表企業: ファーストリテイリング、アンドエスティHD、パルグループ

メリット

  • 高い利益率:製造から販売まで一貫管理で中間マージン削減
  • 在庫コントロール:需要予測に基づいた柔軟な生産調整
  • ブランド力:独自のブランドイメージを構築

デメリット

  • 在庫リスク:売れ残りリスクを自社で抱える
  • 初期投資:店舗開発や商品開発に多額の資金が必要

郊外型ディスカウント店の特徴

代表企業: しまむら

メリット

  • 低コスト運営:郊外立地で家賃負担が軽い
  • 景気後退局面に強い:低価格志向の受け皿
  • 安定した収益:成熟ビジネスモデル

デメリット

  • 成長性の限界:国内市場はほぼ飽和
  • EC化の遅れ:オンライン対応が課題

百貨店系アパレルの特徴

代表企業: オンワードホールディングス

メリット

  • ブランド価値:長年培った高品質イメージ
  • 顧客ロイヤリティ:固定客が多く安定収益
  • 高単価商品:利益率向上の余地

デメリット

  • 百貨店市場の縮小:主要販路が減少傾向
  • 高齢化:顧客の高齢化が進行

2026年の投資戦略とセクター見通し

マクロ環境の影響

プラス要因

  1. インバウンド需要の回復:訪日外国人の増加が高額消費を押し上げ
  2. 賃上げトレンド:実質賃金の上昇が消費を下支え
  3. 円安メリット:輸出型企業には追い風(特にファーストリテイリング)
  4. DX推進:オンライン販売の拡大余地

マイナス要因

  1. 天候リスク:異常気象による季節商品の売上変動
  2. 中国経済減速:主要市場の成長鈍化
  3. 原材料高:綿花など原材料価格の上昇
  4. 為替変動:円高局面では収益が圧迫

セクター別投資戦略

積極的成長を狙うなら

推奨: ファーストリテイリング、パルグループHD

  • グローバル展開による成長余地が大きい
  • 高い収益性と財務健全性
  • 中長期での株価上昇が期待できる

安定配当を狙うなら

推奨: しまむら、オンワードHD

  • 成熟した事業モデルで安定配当
  • ディフェンシブ銘柄として不況局面に強い
  • 配当利回り2〜3%台を確保

リカバリーストーリーを狙うなら

推奨: オンワードHD、アンドエスティHD

  • 構造改革が進展中で収益性改善余地
  • バリュエーションが相対的に割安
  • 業績サプライズの可能性

ファッション株投資の7つのチェックポイント

1. 既存店売上高の動向

既存店売上高は企業の真の実力を示す重要指標です。新規出店による見かけの成長ではなく、既存店が成長しているかを確認しましょう。

2. 営業利益率の水準

営業利益率5%以上が望ましい水準です。10%超なら優良企業と判断できます。利益率の推移も重要で、改善トレンドにあるか確認が必要です。

3. EC売上比率と成長率

オンライン販売の比重は今後も高まります。EC売上比率15%以上、年率10%以上の成長が望ましい水準です。

4. 在庫回転率

在庫回転率が高いほど効率的な経営です。年6回転以上が目安。低下傾向にある場合は要注意です。

5. 出店計画と既存店対策

新規出店による成長余地と、既存店の活性化策の両面をチェック。閉店数が多い場合は構造的問題の可能性があります。

6. 為替感応度

海外売上比率が高い企業は為替の影響を受けやすくなります。ヘッジ戦略の有無も確認しましょう。

7. ESG対応

サステナビリティへの取り組みは、今後の企業価値を左右します。リサイクル素材の使用、労働環境改善など、ESG対応を評価しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: ファッション株は景気敏感株ですか?

A: 企業によって異なります。ファーストリテイリングのような高品質・適正価格の企業は景気に左右されにくい一方、高額品を扱う百貨店系アパレルは景気の影響を受けやすい傾向があります。

Q2: 配当狙いで投資するならどの銘柄が良いですか?

A: アンドエスティHDやオンワードHDが配当利回り2〜3%台で安定配当を継続しており、配当狙いの投資に適しています。

Q3: インバウンド需要の恩恵を受ける銘柄は?

A: ファーストリテイリング、三越伊勢丹などの百貨店関連が恩恵を受けやすい傾向にあります。

Q4: 中国リスクはどの程度考慮すべきですか?

A: ファーストリテイリングなど中国市場の売上比率が20%を超える企業は注意が必要です。ただし、分散投資によりリスクは軽減されています。

まとめ:ファッション株投資の魅力と注意点

日本のファッション・アパレル業界は、成熟市場でありながらも、グローバル展開やデジタル化により新たな成長機会を迎えています。

投資の魅力

  • 安定した需要:衣料品は生活必需品で底堅い需要
  • グローバル成長:海外展開による成長余地
  • 配当の安定性:成熟企業は安定配当を継続
  • ESG投資対象:サステナビリティへの取り組みが評価

注意すべきリスク

  • 天候依存:異常気象による業績変動
  • 在庫リスク:トレンドの読み違いによる在庫損
  • EC競争:オンライン対応の遅れは致命的
  • 為替変動:グローバル企業は為替リスクに注意

最終的な投資判断

ファッション株への投資は、各企業の戦略、財務状況、市場ポジションを総合的に判断することが重要です。成長性を求めるなら海外展開企業、安定性を求めるなら国内ディスカウント店や百貨店系というように、自身の投資スタイルに合わせた銘柄選択をお勧めします。

免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。株式投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断で行ってください。