【2027年】必ず保有したい日本株Vol.3|AIインフラの「物理層」を支える10銘柄

【2027年】必ず保有したい日本株Vol.3|AIインフラの「物理層」を支える10銘柄

2027年に必ず保有したい日本株シリーズの第3弾は、「AIインフラの物理層」をテーマに10銘柄を選びました。生成AIの投資テーマというと半導体やソフトウェアに目が向きがちですが、実際にAIを動かしているのは、電気を起こし、送り、建物に入れ、冷やし、そして半導体を検査するという物理的な設備です。これらは目立たない代わりに、需要が公表された計画として確定しており、2027年という時間軸で最も予測しやすい領域でもあります。

前提となる金融環境は、Vol.1を公開した8月から大きく動きました。日本銀行は2026年9月17・18日の金融政策決定会合で政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げ、1995年以来およそ31年ぶりの水準となりました。2024年3月のマイナス金利解除以降はおおむね半年に1回のペースでしたが、6月に続く9月の利上げで間隔が3か月に縮まり、利上げペースは明確に加速しています。金利が上がる局面では、期待だけで買われてきた銘柄は売られやすく、すでに受注と売上を伴う事業を持つ企業に資金が向かいます。本記事の10銘柄を選んだ理由はここにあります。

本記事の結論
結論1:データセンターの最大需要電力は2025年度の47万kWから2034年度に616万kWへ拡大する見通しで、電力・送配電・冷却の設備需要は計画として確定している。
結論2:利上げペースが加速した局面では、期待先行の銘柄より「すでに受注残を持つ設備側」のほうが保有を続けやすい。
結論3:10銘柄は「発電」「送る・つなぐ」「建てる・冷やす」「つくる装置」の4ブロックに分かれ、組み合わせることでAI相場の変動を吸収しやすくなる。

目次

2027年に必ず保有したい日本株Vol.3|厳選10銘柄一覧

まずは全体像です。10銘柄はいずれも、AIデータセンターが動くために物理的に必要な設備・部材・工事を担っています。Vol.1(金利・AI・国策の3軸で選んだ大型株10銘柄)、Vol.2(フードテック・社会インフラの国策銘柄8選)とは重複しない構成にしています。

コード銘柄名ブロック2027年に効く主なテーマ
9503関西電力発電原子力の稼働実績とデータセンター誘致
5802住友電気工業送る・つなぐ光配線・光デバイスと送配電ケーブル
5803フジクラ送る・つなぐAIサーバーの高密度光ファイバ配線
6508明電舎送る・つなぐ変圧器・受変電設備の新増設需要
5333日本ガイシ送る・つなぐがいし・NAS電池と半導体装置向け部材
6367ダイキン工業建てる・冷やすデータセンター冷却と省エネ空調
6503三菱電機建てる・冷やす受配電システムとFA、防衛宇宙
1802大林組建てる・冷やす大型データセンターの建設需要
6857アドバンテストつくる装置AI半導体の検査工程の長時間化
6146ディスコつくる装置広帯域メモリの積層化と薄化加工

この4ブロック構成には意味があります。AI関連として一括りにされがちですが、半導体装置は市況で激しく動く一方、電力会社や建設会社は景気変動に比較的強く、冷却や受配電はその中間に位置します。性格の異なる4つを組み合わせることで、AI相場が調整する局面でもポートフォリオ全体が同時に下落する事態を避けやすくなります。

なぜ2027年に「AIインフラの物理層」なのか

銘柄の前に、このテーマを選んだ3つの理由を整理します。いずれも推測ではなく、公的機関や事業者がすでに公表している計画に基づくものです。

① 利上げペースが加速し、物色の基準が変わった

日銀は2026年9月の会合で政策金利を1.25%へ引き上げました。補完当座預金制度の適用利率は9月24日以降1.25%、基準貸付利率は1.5%となっています。次回の金融政策決定会合は10月29日・30日に予定されています。注目すべきは市場の見方で、2026年9月24日時点で市場が織り込む政策金利の到達点は、日銀が推計する中立金利の上限である2.5%を超えてきました。原油価格の高止まりと円安を通じたインフレ圧力の高まりが背景にあり、一方で「行き過ぎではないか」という声も出ています。

証券会社の見通しはこれより緩やかで、野村證券は2026年10月、2027年3月、2027年7月の利上げを見込み、2027年末の政策金利を1.75%と予想するメインシナリオを示しています。いずれにせよ、2027年に向けて金利が上がり続ける前提は共通しています。金利上昇局面では将来利益の割引率が上がるため、収益化が先の企業ほど評価が下がります。すでに受注残と売上がある設備関連に注目する理由はここにあります。

② 電力需要の増加は「予測」ではなく「計画」になっている

電力広域的運営推進機関の需要想定によると、データセンターの新増設による最大需要電力は2025年度の47万キロワットから2034年度には616万キロワットへ、需要電力量は同30億キロワット時から440億キロワット時へ拡大する見通しです。データセンターと半導体工場を合わせた上乗せ分で見ると、2025年度の36億キロワット時から2034年度には514億キロワット時へと14倍を超える規模になります。

この数字が重要なのは、願望ではなく接続申込の積み上げに基づいている点です。事業者が実際に系統への接続を申し込んだ結果が集計されており、送配電設備の整備計画もこれに合わせて動いています。供給計画では主要な変圧器の新増設が合計56台、増加容量3万5,030メガボルトアンペアと整理され、うち変電所の新設に伴う分として25台、1万6,200メガボルトアンペアが計上されています。設備メーカーから見れば、需要の規模と時期がすでに書面になっているということです。

押さえておきたい数字
1.データセンターの最大需要電力:2025年度47万kW → 2034年度616万kW(電力広域的運営推進機関)
2.データセンター・半導体工場の需要電力量上乗せ分:2025年度36億kWh → 2034年度514億kWh
3.主要変圧器の新増設:合計56台、増加容量3万5,030MVA(うち変電所新設分25台・1万6,200MVA)
4.千葉県印西市の電力需要:2027年度に2017年度の6倍(東京電力パワーグリッド)

③ 2027年に竣工・量産の節目が集中している

3つ目が、2027年という年に固有の事情です。AIインフラをめぐる大型案件の多くが、この時期に完成と稼働の節目を迎えます。

  •  AWSは2023年から2027年にかけて、東京・大阪リージョンに2兆2,600億円を投じる計画を公表しています。
  • NTTのデータセンター事業は2023年から2027年に1兆5,000億円超を投資し、国内13拠点で合計117メガワットの電力容量を展開しています。白井の50メガワット拠点は2027年3月の竣工予定です。
  • 東京電力パワーグリッドは、千葉県印西市の千葉ニュータウンエリアについて、2027年度の電力需要が2017年度の6倍に達する見通しを示しています。
  • ラピダスは2027年度下期に北海道・千歳工場で2ナノメートル世代の量産を開始する計画を掲げています。

これらはいずれも、設備の発注が先行して進むタイプの案件です。2027年の竣工・量産に向けて、2026年から2027年前半にかけて機器・工事の売上が立ち上がる流れになります。

2027年に必ず保有したい日本株Vol.3【10銘柄の個別解説】

ここからは1社ずつ見ていきます。各社について、保有を検討する根拠と、あらかじめ想定しておくべきリスクを併記しました。

1. 関西電力(9503)|データセンターを呼び込める電力会社

▎注目テーマ:原子力の稼働実績とデータセンター誘致

AIデータセンターの立地を決めるのは、土地の値段よりも「安定して大量の電気が届くか」です。関西電力は国内で最も原子力発電所の稼働が進んでいる電力会社の一つであり、燃料価格の変動を受けにくいベース電源を持つことが、そのまま電力の安定供給力につながっています。日立総合計画研究所の分析でも、関西電力送配電管内では、けいはんなエリアや箕面市彩都でデータセンターによる局所的な電力需要の増加が観測されていると指摘されています。

電力会社は長らく「成長性のない公益株」と見なされてきましたが、データセンターという新しい大口需要家の出現で位置づけが変わりつつあります。電気を売る量が構造的に増える見通しが立つのは、人口減少が続く日本の内需企業としては例外的な状況です。燃料費調整制度により燃料高の影響は時間差で料金に転嫁される仕組みも、収益の予見可能性を支えています。

ポイント
原子力の稼働実績により、燃料価格変動の影響を相対的に受けにくい電源構成を持つ。管内でデータセンターによる電力需要の増加が実際に観測されている。人口減少下の内需企業としては珍しく、販売電力量の構造的な増加が見込める。

2. 住友電気工業(5802)|データセンターの「中」と「外」をつなぐ

▎注目テーマ:光配線・光デバイスと送配電ケーブル

データセンター関連で住友電気工業が強いのは、サーバー間をつなぐ光デバイス・光配線機器・光ケーブルです。AI向けサーバーは1ラックあたりの通信量が従来機と桁違いで、ラック内外の配線本数と求められる伝送速度が同時に増えます。同社はデータセンター関連事業の成長戦略を明確に打ち出しており、この領域の需要増が業績の押し上げ要因になっています。

もう一つの柱が送配電ケーブルです。データセンターを建てても、そこまで電気を運ぶ送電線がなければ稼働できません。東京電力パワーグリッドは千葉県印西市について、2027年度の電力需要が2017年度の6倍に達する見通しを示し、新京葉変電所から千葉印西変電所まで10.1キロメートルの洞道を掘削して275キロボルトの超高圧送電設備を整えました。この種の系統増強工事は全国で同時進行しており、ケーブルメーカーには数年単位の受注が積み上がる構図です。

ポイント
データセンター内部の光配線と、外部の送配電ケーブルの両方を手がける。系統増強工事は計画が公表済みで、受注の時間軸が読みやすい。海底ケーブルや自動車用ワイヤハーネスなど、収益源が分散している。

3. フジクラ(5803)|AIサーバーの配線本数そのものが需要

▎注目テーマ:光ファイバケーブルと高密度配線

AIデータセンターでは、GPUを多数つないで一つの計算資源として動かすため、サーバー間の配線が従来型のデータセンターとは比較にならない密度になります。限られたラックスペースに大量の回線を通すには、細径で高密度な光ファイバケーブルが必要です。フジクラはこの分野で技術的な蓄積を持ち、生成AI向け需要の拡大が直接の追い風になる位置にいます。

この領域が構造的に強いのは、サーバーの世代が変わるたびに配線も更新される点です。計算能力の向上に伴って通信速度の要求水準も上がるため、既存設備の置き換え需要が繰り返し発生します。一度建てたら終わりではなく、更新が続くストック型の需要構造になっているのが特徴です。

ポイント
AIサーバーの高密度化が、そのまま光ファイバの需要増に直結する。サーバー世代交代ごとに配線の更新需要が繰り返し発生する。国内外のハイパースケール事業者の投資計画が公表済みで、需要の裾野が読みやすい。

4. 明電舎(6508)|変圧器という「静かなボトルネック」

▎注目テーマ:変圧器・受変電設備の更新需要

データセンターを増やすうえで、世界的に不足しているのが変圧器です。電力広域的運営推進機関の供給計画では、主要な変圧器の新増設が合計56台、増加容量は3万5,030メガボルトアンペアと整理されており、このうち変電所の新設に伴う分として25台、1万6,200メガボルトアンペアが計上されています。明電舎は変圧器や受変電設備を手がけ、この更新・新設需要の受け皿になります。

変圧器が投資テーマとして注目される理由は、増産が簡単ではないからです。製造には専用設備と熟練技能が必要で、生産能力をすぐには増やせません。需要が急増しても供給が追いつかない状態が続けば、メーカー側には価格決定力が生まれます。需要が公表された計画として確定している点と、供給制約がある点の両方が揃っているのが、この分野の特徴です。

ポイント
変圧器の新増設計画が公表済みで、需要の規模と時期が読みやすい。製造に専用設備と熟練技能を要するため、供給制約から価格決定力が働きやすい。国内の老朽化した電力設備の更新需要が、データセンター需要に上乗せされる。

5. NGK(5333)|送電網とAIの両方に部材を出す

▎注目テーマ:がいし・NAS電池と半導体製造装置向けセラミックス

日本ガイシは、送電線を支える絶縁体であるがいしの世界的なメーカーです。送配電網の増強が進めば、鉄塔や変電所の新設に伴ってがいしの需要も増えます。加えて、大容量のNAS電池を手がけており、再生可能エネルギーの出力変動を吸収する蓄電設備として、電力系統の安定化に使われます。発電と送電の両方に関わる部材を供給している点が、この会社の立ち位置です。

さらに半導体製造装置向けのセラミック部材という第三の柱があります。半導体の微細化が進むほど、製造装置内部で求められる温度制御や耐腐食性の水準が上がり、高機能セラミックスの出番が増えます。電力インフラと半導体という、本記事の2つのテーマの両方に関わる珍しい企業です。

ポイント
送配電網の増強と、半導体製造装置の需要増の両方から恩恵を受ける。がいしは代替の難しい部材で、長期にわたる更新需要が続く。NAS電池により、蓄電という電力系統の新しい需要領域にも関与する。

6. ダイキン工業(6367)|「冷やす」が電力の次のボトルネック

▎注目テーマ:データセンター冷却と省エネ空調

データセンターの消費電力のうち、相当な割合が冷却に使われます。従来のハイパースケール施設が1棟あたり30〜70メガワット規模であるのに対し、AIデータセンターは200メガワットから1ギガワット級と見込まれており、発熱量も桁違いになります。空冷では処理しきれず、液冷への移行が進む領域です。空調で世界的な地位を持つダイキン工業にとって、ここは新しい大口市場になります。

ダイキンの強みは、単なる機器販売にとどまらない点です。世界各地に生産・販売網を持ち、冷媒の開発から機器、据付、保守までを一貫して手がけます。データセンターは24時間365日止められない施設であるため、保守サービスの重要性が高く、継続的な収益が見込める構造です。

ポイント
AIデータセンターの発熱量増加により、冷却が電力に次ぐボトルネックになっている。冷媒から機器、保守まで一貫して手がけ、継続収益を確保しやすい。世界各地に生産拠点を持ち、地域ごとの需要変動を吸収できる。

7. 三菱電機(6503)|受配電からFA、防衛宇宙まで

▎注目テーマ:受配電システムとファクトリーオートメーション

三菱電機はデータセンターの運用・構築に関わる製品やサービスを展開し、不可欠な光デバイスも供給しています。加えて受配電システムを手がけており、建物に届いた電気を各設備へ安全に分配する領域を押さえています。送配電網の増強が「外」の話だとすれば、受配電は「中」の話であり、データセンターの新設には必ず付いてくる需要です。

もう一つの柱がファクトリーオートメーションです。人手不足が構造化する日本では、工場の自動化投資は景気変動とは別の論理で進みます。さらに防衛・宇宙分野ではレーダーや人工衛星を手がけており、総額約43兆円の防衛力整備計画の最終年度が2027年度にあたることも、受注環境の追い風になります。事業の幅が広く、特定テーマの失速が全体に波及しにくい構成です。

ポイント
データセンターの受配電と光デバイスの両面で関与する。FA事業が、人手不足という景気に左右されない需要を取り込む。防衛・宇宙分野を持ち、2027年度までの防衛予算の恩恵を受ける。

8. 大林組(1802)|データセンターは「建てる」ところから始まる

▎注目テーマ:データセンター建設と再開発

どれほど投資計画が公表されても、建物がなければデータセンターは動きません。国内では大型案件が相次いでおり、AWSは2023年から2027年にかけて東京・大阪リージョンに2兆2,600億円を投じる計画を公表しています。NTTのデータセンター事業も同期間で1兆5,000億円超の投資を掲げ、国内13拠点で合計117メガワットの電力容量を展開しています。こうした大規模施設の建設は、技術力と施工実績を持つ総合建設会社に集中します。

データセンター建設は通常のオフィスビルとは要求仕様が異なり、床荷重、電源の冗長化、冷却設備との取り合いなど専門性が求められます。実績を積んだ企業に案件が集まりやすく、参入障壁が働く領域です。加えて都市再開発や老朽インフラの更新という、国内建設需要の別の柱も控えています。

ポイント
国内のデータセンター投資計画が複数公表され、建設需要の裾野が広がっている。専門性の高い施工実績が参入障壁として働く。都市再開発や老朽インフラ更新という別の需要の柱も持つ。

9. アドバンテスト(6857)|AI半導体は「検査」で止まる

▎注目テーマ:半導体テスタとAI向け検査需要

半導体は製造しただけでは出荷できず、正常に動作するかを検査する工程を必ず通ります。アドバンテストはこの検査装置であるテスタの大手です。AI向けの先端半導体や広帯域メモリは構造が複雑で、検査に要する時間が従来品より大幅に長くなります。同じ枚数を処理するのにより多くの装置が必要になるため、AI半導体の生産が増えるほどテスタの需要は加速度的に伸びます。

2027年に向けた固有の材料としては、ラピダスが2027年度下期に北海道・千歳工場で2ナノメートル世代の量産を開始する計画を掲げている点が挙げられます。最先端のロジック半導体ほど検査の難度は上がり、テスタメーカーにとっては単価と台数の両方が伸びる展開が期待されます。

ポイント
AI半導体は検査時間が長く、生産量の増加に対して装置需要が加速度的に伸びる。2027年度下期の国産2ナノ量産という時期の明確な材料がある。検査工程は省略できず、製造が続く限り需要が途切れない。

10. ディスコ(6146)|チップを切る・削るの独占的地位

▎注目テーマ:精密加工装置と広帯域メモリの積層

ディスコは半導体ウエハを切断するダイシングソーと、薄く削るグラインダで世界的に高いシェアを持ちます。この領域が2027年に向けて重要なのは、AI向けの広帯域メモリがチップを何層にも積み上げる構造を採っているためです。積層するにはウエハを極限まで薄く削る必要があり、層数が増えるほど加工工程も増えます。微細化だけでなく積層化が進んでいることが、同社にとっては追い風です。

後工程と呼ばれるこの領域は、かつて付加価値の低い工程と見られていましたが、チップの性能が前工程だけでは伸びにくくなった結果、戦略的な重要性が高まりました。消耗品であるブレードの販売も継続的な収益源となっており、装置販売の波を一定程度ならす役割を果たしています。

ポイント
広帯域メモリの積層化により、薄化・切断工程の需要が構造的に増える。ダイシング・グラインディング分野で高いシェアを維持している。消耗品の販売が継続収益となり、装置の販売サイクルを部分的に平準化する。

10銘柄をどう組み合わせるか|4ブロックの配分設計

10銘柄すべてを同じ金額で買う必要はありません。4つのブロックは値動きの性格が大きく異なるため、どこに厚みを持たせるかで、ポートフォリオ全体の振れ幅が変わります。

ブロックごとの役割と値動きの性格

ブロック銘柄値動きの性格役割
発電関西電力小さい下落局面の緩衝材。配当も期待しやすい
送る・つなぐ住友電工/フジクラ/明電舎/日本ガイシ中〜大需要が計画として確定した中核ブロック
建てる・冷やすダイキン/三菱電機/大林組中他事業も持ち、AI以外の収益源で支える
つくる装置アドバンテスト/ディスコ非常に大きい上昇局面の牽引役。配分は抑えめに

実務的には、「つくる装置」ブロックの比率を全体の2割程度までに抑え、「発電」と「建てる・冷やす」で下支えをつくる構成が扱いやすいでしょう。半導体装置は上昇局面での伸びが大きい反面、調整局面では短期間で3割以上下げることも珍しくありません。この2銘柄に資金の半分を置くと、相場が崩れたときに保有を続けることが心理的に難しくなります。

Vol.1・Vol.2との組み合わせ方

本シリーズは巻ごとに性格が異なります。Vol.1は金利・AI・国策の3軸で選んだ大型株10銘柄、Vol.2はフードテックと社会インフラの国策銘柄8選、そして本Vol.3がAIインフラの物理層です。Vol.1がAIの「頭脳」側(半導体装置・素材・総合電機)を押さえているのに対し、Vol.3は「身体」側、つまり電気・配線・冷却・建物を担っています。

すでにVol.1の銘柄を保有している場合、Vol.3から追加するなら「発電」と「建てる・冷やす」のブロックが相性に優れます。Vol.1には半導体関連がすでに含まれているため、Vol.3の「つくる装置」ブロックまで買い増すと、半導体市況への依存度が高くなりすぎるためです。Vol.2の食品・水インフラ銘柄は値動きが最も穏やかなので、全体のクッションとして機能します。

買う時期を分ける

利上げが続く局面では、政策決定会合の前後で金利敏感株の値動きが荒くなります。次回の日銀会合は2026年10月29日・30日に予定されており、その後も2027年にかけて複数回の利上げが見込まれています。会合のたびに相場が動く以上、特定の日に一括で買う意味は乏しく、毎月あるいは四半期ごとに一定額を買い付ける方法のほうが、結果として購入単価は安定します。

2027年に向けたカタリストカレンダー

本記事で取り上げた材料を時系列に並べました。株価は事前に期待で動き、実現時に材料出尽くしとなることが多いため、「いつ何が起きるか」を把握しておくと、値動きの理由を解釈しやすくなります。

時期出来事関連するブロック
2026年10月29・30日日銀金融政策決定会合(追加利上げの観測)全ブロック(金利感応)
2026年度内データセンター向け系統増強工事の進行送る・つなぐ
2027年3月NTTデータセンター白井拠点(50MW)の竣工予定建てる・冷やす
2027年前半日銀の追加利上げ観測(野村予想では3月)発電(利払い負担)
2027年度千葉県印西市の電力需要が2017年度の6倍に送る・つなぐ
2027年度防衛力整備計画(総額約43兆円)の最終年度建てる・冷やす
2027年度下期ラピダスが千歳工場で2nm世代の量産開始予定つくる装置
2027年AWS・NTTの大型投資計画の最終年度全ブロック

使い方として重要なのは、予定どおり進んだかどうかを確認することです。計画が前倒しになれば関連銘柄には追い風となり、遅延すれば期待の剥落として売られます。特にラピダスの2027年度下期量産は、国内の半導体製造装置メーカーにとって最大の検証ポイントになります。

2027年に向けて想定しておきたい3つのリスク

強気の見通しを持つときこそ、逆のシナリオを具体的に描いておく必要があります。本テーマに固有のリスクを3つ挙げます。

リスク① 金利の上がりすぎ

市場が織り込む政策金利の到達点は、2026年9月24日時点で日銀が推計する中立金利の上限である2.5%を超えました。これに対しては「行き過ぎ」との見方も出ています。仮に市場の織り込みどおり2.5%を超える水準まで利上げが進めば、設備投資の資金調達コストが上がり、データセンターや系統増強の計画そのものが後ろ倒しになる可能性があります。電力会社や建設会社のように有利子負債の大きい業態では、利払い負担の増加が直接的に利益を削ります。

リスク② AI投資の一巡と系統制約

電力広域的運営推進機関の需要想定は、系統への接続申込状況をベースにしています。裏を返せば、申込が取り下げられれば想定も下方修正されるということです。また接続の可否は送配電網の空き容量に左右され、増強には時間がかかります。この系統制約によってデータセンターの新増設が計画どおり進まない場合、設備需要の立ち上がりも後ろにずれます。需要の伸びは北海道・東京・中国地方などに偏っており、地域ごとの進捗の差にも注意が必要です。

リスク③ 原材料価格と為替

ケーブルや変圧器は銅を大量に使い、建設は鋼材と労務費の影響を強く受けます。原油価格の高止まりが続く環境では、原材料と物流のコストが上振れしやすく、受注時の見積もりとの差が採算を圧迫します。また為替については、円安が輸出企業の採算を支える一方で、輸入原材料のコストを押し上げるという二面性があります。10銘柄のなかでも、内需型の電力・建設と、輸出比率の高い装置・部材とでは、為替の影響が逆方向に働く点を理解しておくべきです。

リスク管理の実務的な考え方
「つくる装置」ブロックは値動きが大きいため、全体に占める比率をあらかじめ決めておく。値上がりによって特定ブロックの比率が高くなりすぎた場合は、年に1〜2回リバランスを行う。生活資金や近い将来に使う予定のある資金は、株式に振り向けない。

よくある質問(FAQ)

Q. Vol.1・Vol.2を読んでいなくても大丈夫ですか?

A. 本記事だけで完結する構成にしています。Vol.1は金利・AI・国策の3軸で選んだ大型株10銘柄、Vol.2はフードテックと社会インフラの国策銘柄8選で、いずれも本記事とは銘柄が重複していません。すでに前の巻の銘柄を保有している場合は、本記事の「Vol.1・Vol.2との組み合わせ方」の項目を参考にしてください。

Q. なぜ半導体株そのものではなく、電力や建設を選ぶのですか?

A. 半導体株を外しているわけではなく、本記事でもアドバンテストとディスコを取り上げています。ただし半導体関連は値動きが非常に大きく、米国のハイテク株の調整に連動して業績とは無関係に売られます。電力・送配電・建設は、需要が公表された計画として確定している一方で値動きが穏やかなため、両方を組み合わせることで保有を続けやすくなるという考え方です。

Q. 政策金利はどこまで上がる見通しですか?

A. 2026年9月18日の会合で1.25%に引き上げられました。野村證券のメインシナリオでは2027年末に1.75%とされる一方、市場が織り込む到達点は2026年9月24日時点で2.5%を超えています。ただし市場の織り込みは日銀が決定した将来の政策ではなく、「行き過ぎ」との指摘も出ています。幅のある予想として受け止めるのが適切です。

Q. 電力会社の株は値上がりしにくいのではありませんか?

A. 従来はそのとおりでしたが、データセンターという新しい大口需要家の出現で前提が変わりつつあります。人口減少が続く日本で、販売電力量が構造的に増える見通しが立つのは例外的です。一方で規制産業であること、原子力の稼働が政策や司法の判断に左右されること、有利子負債が大きく金利上昇の影響を受けやすいことは変わりません。

Q. 10銘柄すべてを買う必要はありますか?

A. 必要ありません。4つのブロックから1銘柄ずつ、計4銘柄を選ぶだけでも分散の効果は得られます。たとえば「関西電力+住友電気工業+ダイキン工業+アドバンテスト」のように、値動きの穏やかなものと大きいものを組み合わせる形が始めやすいでしょう。同じブロックから複数買っても分散にはなりません。

Q. 新NISAで保有するのに向いている銘柄はどれですか?

A. 成長投資枠では配当課税が非課税になるため、配当利回りの相対的に高い電力・総合電機・建設が候補になります。一方、値動きの大きい半導体装置は、下落した場合に他の口座の利益と相殺できないというNISAの制約が不利に働く場面があります。いずれの場合も1銘柄に集中させず、複数銘柄に時期を分けて買い付けることをおすすめします。

まとめ|2027年は「計画として確定した需要」を持つ銘柄を

AI投資の話題は半導体とソフトウェアに集まりがちですが、実際にボトルネックになっているのは電力であり、冷却であり、配線であり、建物です。データセンターの最大需要電力は2025年度の47万キロワットから2034年度に616万キロワットへ拡大する見通しで、主要変圧器は56台の新増設が計画され、千葉県印西市では2027年度の電力需要が2017年度の6倍に達します。これらは予想ではなく、すでに公表された計画です。

2026年9月に政策金利が1.25%へ引き上げられ、利上げペースが加速したことで、期待だけで買われてきた銘柄には逆風が吹いています。この環境で保有を続けやすいのは、将来の夢ではなく、現在進行形の受注と工事を持つ企業です。本記事で取り上げた10銘柄は、関西電力、住友電気工業、フジクラ、明電舎、日本ガイシ、ダイキン工業、三菱電機、大林組、アドバンテスト、ディスコの10社です。

4つのブロックに分かれていること、そして値動きの性格がブロックごとに大きく違うことが、この10銘柄構成の核心です。相場が荒れる日に売らずに済む理由を、買う前に言語化しておくこと。シリーズを通じて変わらない、最も重要な点です。

免責事項:記載の見通しや数値は2026年10月2日時点で公表されている情報に基づくもので、将来の投資成果を示唆・保証するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。株式投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断で行ってください。

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