はじめに|情報・通信セクターが注目される理由
東証プライム・スタンダード・グロースの各市場には、情報・通信(IT)セクターに分類される企業が600社以上上場しています。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要、サイバーセキュリティ投資の拡大、クラウドサービスの普及など、複数の追い風が重なっていることから、中長期の成長テーマとして関心を集めています。
本記事では、システムインテグレーター(SIer)、ECソリューション、セキュリティ、医療情報システム、ゲーム、SaaS(クラウド型ソフトウェア)など、事業モデルの異なる情報・通信テーマの日本株15銘柄を厳選して紹介します。それぞれの特色や注目ポイント、確認しておきたいリスクを整理しましたので、銘柄選びの参考にしてください。
【ポイント】 情報・通信セクターは事業モデルの幅が広く、SIerのような受託型ビジネスから、SaaSのようなストック型ビジネスまで収益構造が大きく異なります。比較する際は業態の違いを意識することが重要です。
情報・通信テーマの日本株15銘柄一覧
まずは今回紹介する15銘柄を一覧表にまとめました。銘柄コードや市場区分、特色を横断的に比較できます。
| No. | 銘柄名(コード) | 市場 | 特色・強み |
| 1 | 構造計画研究所ホールディングス(208A) | 東証STD | 独立系SI持株会社。祖業の構造計算・防災コンサルに強み、クラウド事業を育成中 |
| 2 | 日鉄ソリューションズ(2327) | 東証PRM | 日本製鉄グループの大手SIer。産業・鉄鋼、流通、金融など幅広い業種のIT基盤を支える |
| 3 | ソフトクリエイトホールディングス(3371) | 東証PRM | EC構築ソフト「ecbeing」が主力。ワークフロー製品も展開し累進配当を志向 |
| 4 | TIS(3626) | 東証PRM | 独立系SI大手。クレジットカードなど決済分野に強く、5セグメント体制で総合力を発揮 |
| 5 | GMOペパボ(3633) | 東証STD | GMOグループ傘下。レンタルサーバー「ロリポップ!」中心にEC支援・ハンドメイド事業も展開 |
| 6 | FFRIセキュリティ(3692) | 東証GRT | サイバーセキュリティ専業。「yarai」シリーズなど国産防御技術で存在感を高める |
| 7 | ソフトウェア・サービス(3733) | 東証STD | 電子カルテなど医療情報システムに特化。単一セグメントで安定した収益基盤を持つ |
| 8 | ガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765) | 東証PRM | 「パズル&ドラゴンズ」が収益柱。グローバル展開と新規タイトルの動向に注目 |
| 9 | 大塚商会(4768) | 東証PRM | 中堅・中小企業向けIT商社の最大手。ハードからソフト・保守までワンストップで提供 |
| 10 | オービック(4684) | 東証PRM | 会計・給与などERPソフト「OBIC7」を自社開発・自社販売。業界屈指の高収益体質 |
| 11 | BIPROGY(8056) | 東証PRM | 旧日本ユニシス系のSI大手。金融・空運・流通など幅広い業種と取引し、AI活用で生産性向上を推進 |
| 12 | 野村総合研究所(4307) | 東証PRM | 国内最大級のシンクタンク兼ITソリューション企業。金融機関向け基盤システムに強み |
| 13 | サイボウズ(4776) | 東証PRM | グループウェア「kintone」等で国内シェア上位。業務効率化・DX需要を取り込む |
| 14 | 日本プロセス(9651) | 東証STD | 制御・組込システムに強い独立系SI。社会インフラDXを追い風に増収増益と連続増配が続く |
| 15 | Sansan(4443) | 東証PRM | 名刺管理クラウド「Sansan」「Eight」を軸に法人向けDXサービスを提供 |
【ポイント】 上記の市場区分・特色は各社のIR情報や証券情報サイトの公開情報をもとに整理したものです。株価や業績は日々変動するため、投資判断の際は必ず最新の適時開示・決算資料をご確認ください。
各銘柄の特色と注目ポイント
※株価はYahoo!ファイナンスに遷移します
1. 構造計画研究所ホールディングス(208A/東証STD)
独立系のシステムインテグレーション持株会社で、祖業である構造計算ソフトを核に、防災コンサルティングや住宅・建設向けSIに強みを持ちます。近年はクラウド関連事業の育成にも力を入れており、防災・インフラ分野のDX需要を取り込む展開が注目されます。
【ポイント】 自然災害対策への社会的関心の高まりを背景に、防災コンサル・構造解析という専門性の高い事業領域を持つ点が差別化要因です。
【TIP】 決算資料や適時開示で、クラウド事業セグメントの売上比率の推移を確認すると、事業ポートフォリオの転換度合いを把握しやすくなります。
【リスク】 建設・住宅市場の動向や公共投資の予算配分によって、主力の構造計算関連事業の受注環境が左右される可能性があります。
2. 日鉄ソリューションズ(2327/東証PRM)
日本製鉄グループのシステムインテグレーターで、製鉄業で培ったノウハウを生かし、製造・流通・金融・社会公共など幅広い業種にITソリューションを提供しています。インフォコムの連結子会社化などM&Aによる事業拡大も進めています。
【ポイント】 産業・鉄鋼分野に加え流通分野が好調で、直近期は増収増益を達成するなど、業績の改善傾向が続いている点が特徴です。
【TIP】 IT投資需要の堅調さを示す指標として、情報サービス事業の売上収益とEPSの推移を四半期ごとに追うと変化を捉えやすくなります。
【リスク】 生成AIの普及により顧客企業が自前で開発を進める動きが広がれば、外部委託型のSIビジネスの受注量に影響が及ぶ可能性があります。
3. ソフトクリエイトホールディングス(3371/東証PRM)
ECサイト構築ソフト「ecbeing」の提供・カスタマイズを主力とし、ワークフローソフトなども展開しています。ECソリューションとITソリューションの二本柱で事業を構成し、累進配当の方針を打ち出している点も特徴です。
【ポイント】 ECサイト構築需要の拡大やセキュリティ投資の増加を背景に、売上高・営業利益ともに二桁成長を達成している点が注目されます。
【TIP】 連結事業セグメントの構成比(ECソリューションとITソリューションの比率)を確認すると、事業の成長ドライバーを把握しやすくなります。
【リスク】 EC市場の競争激化や、企業のIT投資意欲が減退した場合には、主力のシステム開発・保守売上が伸び悩む可能性があります。
4. TISI(3626/東証PRM)
独立系システムインテグレーターの大手で、クレジットカードなど決済分野のシステムに強みを持ちます。オファリングサービス、BPM、金融IT、産業IT、広域ITソリューションの5セグメント体制で事業を展開しています。
【ポイント】 顧客のデジタル変革(DX)需要への対応や高付加価値ビジネスの提供により、売上高・営業利益ともに過去最高を更新している点が強みです。
【TIP】 セグメント別の営業利益の伸び率を比較すると、産業ITや広域ITソリューションなど、どの分野が成長を牽引しているか把握できます。
【リスク】 特別損失の計上により純利益が減少する局面もあり、一過性の要因による当期純利益のブレには注意が必要です。
5. GMOペパボ(3633/東証STD)
GMOインターネットグループ傘下で、レンタルサーバー「ロリポップ!」やドメイン代行「ムームードメイン」を主力に、ECサイト構築支援やハンドメイド品マーケット「minne」、オリジナルグッズ作成サービス「SUZURI」などを展開しています。
【ポイント】 高単価プランへの契約シフトが進んでおり、主力のドメイン・レンタルサーバー事業の実質的な収益性が改善している点が特徴です。
【TIP】 金融支援事業の連結除外など、事業構成の変化が売上高に与える影響を、セグメント別開示で確認すると実態を把握しやすくなります。
【リスク】 自己資本比率が相対的に低めの水準で推移しており、財務の安定性については他のIT企業と比較して留意する必要があります。
6. FFRIセキュリティ(3692/東証GRT)
サイバーセキュリティ分野に特化した技術企業で、マルウェア検出・防御製品「yarai」シリーズなどを提供しています。エンドポイント検知防御や脅威インテリジェンス、脆弱性診断まで幅広くカバーしています。
【ポイント】 サイバー・セキュリティ事業の好調により、売上高・営業利益ともに大幅な増収増益を達成するなど、高い成長率が続いている点が魅力です。
【TIP】 官民問わずセキュリティ人材が不足しているとされ、受注機会と供給能力のバランスを示す従業員数の推移も確認材料になります。
【リスク】 売上・利益が年度末に集中する傾向があり、四半期ごとの業績や株価が振れやすい点には注意が必要です。
7. ソフトウェア・サービス(3733/東証STD)
電子カルテシステムをはじめとする医療情報システムの開発・販売・導入・保守を手がける企業です。医療情報システム事業の単一セグメントで、安定した収益基盤を築いています。
【ポイント】 月次の受注額(ソフト・ハード販売)が堅調に積み上がっており、将来の売上計上につながる先行指標として注目されています。
【TIP】 直近四半期はハード売上比率の上昇により営業利益が減益となっており、売上高だけでなく利益率の推移も併せて確認すると実態を把握しやすくなります。
【リスク】 医療機関のIT投資は診療報酬改定など制度動向の影響を受けやすく、投資タイミングが政策要因で変動する可能性があります。
8. ガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765/東証PRM)
スマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」が収益の柱で、子会社Gravity社が展開するRagnarok関連タイトルなど、グローバルにコンテンツ事業を展開しています。
【ポイント】 主力タイトルの堅調な推移に加え、Ragnarok関連タイトルの新規展開が業績を牽引し、四半期ベースでは増収増益を達成しています。
【TIP】 モバイルゲーム企業は新作タイトルの成否で業績が大きく変動するため、新規タイトルの投入時期とその後の売上動向を追う視点が有効です。
【リスク】 既存タイトルの売上減少や新規タイトル開発コストの増加により、通期では減収減益となった年度もあり、業績のブレ幅は比較的大きめです。
9. 大塚商会(4768/東証PRM)
中堅・中小企業向けにIT機器の販売から業務ソフトの導入、保守運用までをワンストップで提供するIT商社の最大手です。全国に営業・サポート網を持ち、幅広い業種の顧客基盤を築いています。
【ポイント】 中小企業のDX需要を裾野広く取り込める営業力と、ハード・ソフト・サービスを組み合わせた提案力が長年の強みとされています。
【TIP】 アナリストのレーティングや目標株価の動向は、同業のTIS等と比較しながら確認すると、業界内でのポジションを把握しやすくなります。
【リスク】 中小企業のIT投資意欲は景気動向の影響を受けやすく、マクロ経済の減速局面では受注ペースが鈍化する可能性があります。
10. オービック(4684/東証PRM)
会計・給与・販売管理など基幹業務ソフト「OBIC7」シリーズを自社で開発し、直接販売・保守まで手がける企業です。外部委託に頼らない自社完結型のビジネスモデルにより、業界屈指の高い収益性を誇ります。
【ポイント】 パッケージソフトの自社開発・自社保守モデルにより、営業利益率が非常に高い水準で安定している点が最大の特徴です。
【TIP】 同社の強みを数値で確認する際は、売上高営業利益率をSIer各社と比較すると、ビジネスモデルの違いが数字にはっきり表れます。
【リスク】 高い株価評価(バリュエーション)で推移しやすい銘柄でもあり、成長率が鈍化した局面では株価の調整が生じる可能性があります。
11. BIPROGY(8056/東証PRM)
旧日本ユニシスを前身とするSI大手で、大日本印刷の持分法適用会社でもあります。システムサービス、サポートサービス、アウトソーシング、ソフトウェア、ハードウェアの各セグメントを通じて、金融・空運・流通など幅広い業種に一貫したITソリューションを提供しています。
【ポイント】 カタリナマーケティングジャパンの買収など積極的なM&Aと継続的なIT投資需要を追い風に、増収増益基調が続いている点が注目されます。
【TIP】 システム開発へのAI導入により2030年までに生産性を2倍に引き上げる方針を掲げており、AI活用の進捗が今後の増収効果を測る材料になります。
【リスク】 生成AI関連のニュースや思惑によって株価が大きく変動する局面もあり、業績のファンダメンタルズと株価変動要因を分けて捉える視点が必要です。
12. 野村総合研究所(4307/東証PRM)
国内最大級のシンクタンク機能とITソリューション事業を併せ持つ企業です。金融機関向けの基盤システムをはじめ、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供しています。
【ポイント】 リサーチ・コンサルティングとITソリューションを組み合わせた提案力により、大手金融機関から継続的な受注を獲得している点が強みです。
【TIP】 金融機関の勘定系・情報系システムの更改需要は数年単位のサイクルで発生するため、大型案件の稼働時期を意識して業績を見る視点が有効です。
【リスク】 大型システム開発案件は進捗により四半期ごとの収益計上が変動しやすく、短期的な業績のブレが生じる場合があります。
13. サイボウズ(4776/東証PRM)
業務効率化のためのグループウェア「kintone」などを展開し、国内シェア上位を誇ります。パッケージソフトとクラウドサービスの両形態で提供しており、中小企業から大企業まで幅広い顧客層に浸透しています。
【ポイント】 ノーコード・ローコードでの業務アプリ作成ニーズの高まりを背景に、タスク管理や業務改善の文脈でクラウド需要が拡大している点が魅力です。
【TIP】 サブスクリプション型の収益モデルであるため、契約件数やARR(年間経常収益)の伸びを確認すると事業の勢いを把握しやすくなります。
【注意】 海外の競合クラウドサービスとの価格競争や機能競争が激化しており、成長投資による先行的なコスト増が利益を圧迫する局面もあります。
14. 日本プロセス(9651/東証STD)
制御システム、自動車システム、特定情報システム、組込システム、産業・ICTソリューションの5セグメントを展開する独立系システム開発企業です。社会インフラ分野のソフトウェア開発を通じて、安全・安心、快適・便利への貢献を掲げています。
【ポイント】 自動車システムや組込システムが伸長し、全セグメントで増収増益を達成するなど、社会インフラのDX需要を着実に取り込んでいる点が強みです。
【TIP】 7期連続の増配が予定されるなど株主還元にも積極的で、配当利回りや配当性向の推移を確認すると株主還元姿勢の変化を把握しやすくなります。
【注意】 特別利益の有無など一過性要因で純利益が変動する場合があり、営業利益や本業の収益力を中心に確認することが重要です。
15. Sansan(4443/東証PRM)
法人向け名刺管理クラウド「Sansan」と個人向け名刺管理アプリ「Eight」を軸に、営業DXを支援するサービスを展開しています。近年はクラウド請求書受領サービスなど周辺領域にも事業を広げています。
【ポイント】名刺データを起点とした顧客接点の可視化・営業支援という独自のポジションを築いており、法人契約の積み上げによる収益基盤の強化が進んでいます。
【TIP】 初配や自己株取得枠の設定など株主還元方針の変化は、成長段階から成熟段階への移行を示すシグナルとして注目されています。
【リスク】営業DX市場には競合サービスも多く、新規顧客獲得コストの上昇や解約率(チャーンレート)の動向が収益性を左右する要因となります。
情報・通信株を選ぶ際のチェックポイント
1. 事業モデルの違いを理解する
情報・通信セクターと一口に言っても、受託開発中心のSIer、自社パッケージ販売のソフトウェア企業、月額課金のSaaS企業、コンテンツ課金のゲーム企業では収益構造が大きく異なります。売上高だけでなく、営業利益率や自己資本比率など複数の指標を組み合わせて比較する視点が欠かせません。
2. 成長投資フェーズか成熟フェーズかを見極める
SaaS企業やセキュリティ企業の中には、先行投資を優先して利益成長が緩やかな企業もあれば、既に高収益体質を確立している企業もあります。配当方針や自己株取得の有無も、企業がどのフェーズにあるかを判断する材料になります。
3. 生成AIによる業界構造の変化に注目する
生成AIの普及により、顧客企業が内製開発を進める動きや、AIエージェントが一部の開発・運用業務を代替する可能性が指摘されています。SIer各社がAIをどのように自社サービスに取り込み、新たな付加価値を提供しているかは、中長期の投資判断において重要な着眼点です。
よくある質問(FAQ)
Q. 情報・通信テーマの日本株にはどのような業態がありますか?
A. システムインテグレーター(SIer)、ECソリューション、サイバーセキュリティ、医療情報システム、モバイルゲーム、SaaS(クラウド型ソフトウェア)など幅広い業態が含まれます。同じセクター内でも収益構造が異なるため、比較する際は業態ごとの特徴を理解することが大切です。
Q. SIer株とSaaS株では何が違いますか?
A. SIerは顧客企業からの受託開発が収益の中心で、案件ごとに売上が計上される傾向があります。一方でSaaS企業は月額・年額のサブスクリプション課金が中心で、契約件数の積み上げによりストック型の収益基盤を築きやすいという違いがあります。
Q. 情報・通信株のリスクにはどのようなものがありますか?
A. 顧客企業のIT投資意欲の変化、生成AIの普及による受託開発需要への影響、セキュリティインシデントの発生、競合とのサービス競争など、業態によって異なるリスク要因があります。個別銘柄の適時開示やリスク情報の記載を確認することが重要です。
Q. 高配当を狙うなら情報・通信株のどこに注目すべきですか?
A. 累進配当を掲げる企業や、自己資本比率が高く安定した収益基盤を持つ企業は、配当方針が比較的読みやすい傾向があります。ただし配当利回りだけでなく、配当性向や利益成長の持続性も併せて確認することをおすすめします。
まとめ
情報・通信テーマの日本株は、SIerからセキュリティ、SaaS、ゲームまで多様な業態を含む、成長期待の高いセクターです。本記事で紹介した15銘柄は、それぞれ異なる強みとリスクを持っており、どれか一つに絞るのではなく、業態や成長フェーズの異なる複数銘柄を比較しながら検討することが、納得感のある銘柄選びにつながります。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。
株式投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断で行ってください。
最新の株価や業績情報は日々更新されるため、投資を検討する際は各社の適時開示やIR資料を必ず確認し、ご自身の投資方針やリスク許容度に照らして判断するようにしてください。




















